「高速増殖炉もんじゅ」については、福井県にある原発でトラブル続きの原発だということ、
多くの先進国は無理だと言って撤退しているのに、日本だけが固執してとてつも
ない税金をつぎ込んでいる原発だという程度の認識しかありませんでした。

そんな「もんじゅ」について、今回、政府が方針を固めるため動き出しました。

そこで、この機会に「もんじゅのこれまでの経過」や「高速炉って何?」、「増殖炉って何?」というあたりを少し調べてみたいと思います。

<もんじゅ>高速炉開発へ新会議 官民が連携 関係閣僚会議
毎日新聞 9月21日(水)21時7分配信

◇新方針が決まり次第、もんじゅ廃炉を正式決定へ

政府は21日、首相官邸で原子力関係閣僚会議を開き、日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に代わる新たな高速炉の開発方針を年内に策定することを決めた。使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクルを「もんじゅ

後」も維持する方策を検討するもので、日本のエネルギー政策の転換点となる。新方針が決まり次第、政府はもんじゅの廃炉を正式決定する。

【もんじゅをめぐる動き】

閣僚会議では核燃料サイクルを堅持する方針を確認。新たな高速炉開発に関し、世耕弘成経済産業相を中心とした官民の「高速炉開発会議」を設置し、検討に入ることを決めた。

フランスが計画する新型高速炉「ASTRID(アストリッド)」の共同研究を軸に議論が進む見通しだが、世耕氏は記者団に「ASTRIDのみに頼るわけではない。(1世代前の実験炉)常陽(茨城県大洗町)も再稼働していく。知見を持つ人を集めて開発を進める」と語った。

一方、もんじゅの再稼働を求めてきた松野博一文部科学相は「再開には10年程度かかる。合わせて運転終了まで5000億円以上の追加投資が必要だ」と語り、廃炉はやむを得ないとの考えを示唆した。
・・・・(以下略)

 

「もんじゅ廃炉を正式決定へ」という見出しを見て、やっと「税金の
無駄使い」をやめる決心がついたかと喜ばしく思ったのですが、続く記事には、
「使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクルを“もんじゅ”後も維持する」
「“もんじゅ”に代わる新たな高速炉の開発方針を年内に策定する」
とありました。

なんだ、今ある“もんじゅ”は廃炉にするけど、“もんじゅ”に代わる核燃料サイクル型の高速炉の開発は続ける方針なんだ。

これって、これまでの莫大な無駄遣いに、さらなる無駄遣いを重ねることにならないのでしょうか?
そもそも、使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクル型の「もんじゅ」を25年かけても開発できなかったというのがこれまでの経過ですよね。

結局、「もんじゅ」に関わってきた人たちが、これまでの責任逃れや自己保身のために、
あれこれ理屈をつけて税金を引き出そうとしているのであれば、許せないですよね。

 

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次に経過を簡単にまとめます。

【「もんじゅ」にまつわるお金と問題点】

➀ 管理上の相次ぐミスのため、現在、運転停止になっている。
➁ これまでに、約1兆2000億円をつぎ込みながら稼働実績がほとんどない。
➂ 現行計画に基づいて今後10年間運転すると、税金約6000億円の追加支出が必要になる。
➃ 停止中の現在も、維持費だけで年間約200億円を使っている。
➄ 1985年に着工して、10年後の95年8月にやっと発電を開始したが、
  そのわずか3カ月後に冷却材のナトリウム漏れ事故で運転停止となった。

この時の事故はひどいものでした。そもそも、金属ナトリウムが溶融したものを
熱交換に使うなど、僕は怖くてそんな場所にはいたくないですね。
金属ナトリウムはとてつもなく反応性が大きい物質で、金属というより爆薬に
近い存在だと思いますね。

➅ その後、15年もかけてやっと再稼働したが(2010年5月)、たった3カ月半
  後にまたまた、事故(燃料交換装置の原子炉内落下事故)を起こし運転停止となった。
➆ 2012年には、約1万件の機器の点検漏れが発覚した。(隠ぺい体質)
➇ これまでの20年間、運転実績はたったの250日程度だった。
➈ 職員は、維持費だけで年間200億円も投下している運転停止中の施設内で
  何をしているんでしょう。

このまとめを見ただけでも、こんな代物を25年間もよく抱えていたなと思います。
なのに、「もんじゅ」を廃炉にしたあと、再び、「新たな高速炉開発」を目指すというのです。

原子力発電そのもを廃止すべきだという考えがある一方で、こんな制御しがたい高速増殖炉をこの先、開発していこうという推進派はどのような勝算を持っているのでしょうか。25年かけても、一歩も進まなかったのに。

 

ここで、「廃炉派」と「推進派」の専門家の考えを聞いてみましょう。

もんじゅ漂流20年 専門家はこう見る

毎日新聞2015年12月8日 大阪朝刊

克服困難な課題山積 元京都大原子炉実験所講師・小林圭二さん(76)=原子核工学
 高速増殖炉は克服困難な危険をたくさん抱えており、もんじゅは、ただちに廃炉にするべきだ。

第一に、軽水炉と比べて原子炉が暴走しやすい性質を持つ。2011年3月の東日本大震災や津波のような契機があるともっとひどい惨事になる。福島第1原発事故では核燃料が溶融して放射性物質が外に出たが、もんじゅでは燃料が溶融して集まると最大級の事故の始まりとなり、最悪の場合、核爆発が起こる危険がある。

温度変化しやすいナトリウムが高温で配管を流れているので、緊急停止時の熱衝撃も大きな問題だ。配管は、内側と外側の熱変化の差でストレスがたまらないように肉厚を薄くしているので、地震など外圧に弱い。

燃料のプルトニウムは、粉末として吸うと被ばくの毒性が高く、燃料製造などに厳重な管理が必要だ。核兵器の材料になる純度の高いプルトニウムを増殖炉は作れるので、国際的な緊張を高める。

冷却材に水を使えず、危険物質のナトリウムを大量に使う問題は、95年に起きた火災の危険だけではない。ナトリウムが不透明なので、燃料交換装置の原子炉内落下事故では、復旧や炉内の異常の確認などに年単位の時間がかかった。実験炉「常陽」でも07年、炉内で故障が発生し復旧に7年かかった。

日本原子力研究開発機構による1万件以上の点検漏れは、単にサボったというだけでなく、ナトリウムの検出器など驚くほど多くの点検箇所があって手におえなかった面もあったと思う。運営主体が代わっても、山積する問題を解決するのは無理だ。

こういう装置で、故障による復旧に長時間かかっては稼働率を確実に低下させる。高速増殖炉は、生活に必要な電気を供給する商業用炉として将来も成立しえない。
長年かけ技術向上を 大阪大名誉教授・宮崎慶次さん(78)=原子力工学
 使った以上のプルトニウムを生むもんじゅは核燃料サイクルの肝となる施設。東京電力福島第1原発事故を踏まえた津波対策もできており、海外の高速増殖炉と比べても安全性は高いと考えられる。

原子力規制委員会が、もんじゅを所管する文部科学相に運営主体を原子力機構から変更するよう勧告した。しかし、長年の経験と実績を持つ原子力機構に代わり得る機関はない。(もし別の運営主体を想定するとしたら)経営的にもマンパワーを考えても、電力会社や原発のプラントメーカーが運営を請け負い、そこに原子力機構の技術チームを入れる、というのが現実的な手法ではないか。その場合は、国の支援と3年以上の猶予も必要だ。

1980年に稼働したロシアの高速増殖炉「BN−600」を5年前に見学したことがある。初期には27回ものナトリウム漏れ事故が起きたが、経験を積み技術を向上させ、平均設備利用率74%もの高い信頼性で30年間運転したとのことだった。規制委の勧告は、原子力機構に運営管理能力が欠くとした。しかし、安全性や技術開発の本質を見失ってはいないか。事故が起きることもあるが、それを改良し、開発を進めていく。技術とはそうして長い年月をかけて飛躍していくものだ。

「年に220億円もの費用がかかっている」との指摘がある。しかし、「国家百年の計」の観点から考えてほしい。いったん研究を放棄すると、再開するのは難しい。中国なども原発開発を進めており、将来、ウラン燃料が逼迫(ひっぱく)することはあり得る。日本はエネルギー資源に乏しい。島国なので、ドイツのように陸続きの他国から電力を融通してもらうことも難しい。未来の世代のために、高速増殖炉の開発と、核燃料サイクルの確立を目指すべきだ。

 

【高速増殖炉とは何?現在、稼働している普通の原子力発電と何が違うの?】

高速増殖炉は、発電しながら消費した以上の原子燃料(プルトニウム239)を生成することができる原子炉のことです。したがって、理論上は現在稼働している軽水炉より、ウラン資源の利用効率が飛躍的に高いとされています。

「高速」とは、核分裂の際に高速の中性子を利用することから、「高速」とネーミングされています。
「増殖」とは、消費した以上の原子燃料(プルトニウム)を生成(増殖)させることから、「増殖」とネーミングされています。

現在、稼働している原発は「軽水炉」といわれているもので、熱交換に金属ナトリウムではなく、普通の水を使っているので「軽水炉」と呼ばれています。

 

【高速増殖炉のしくみ】

高速増殖炉は前述しましたが、発電しながら消費した以上の燃料を生成できる原子炉のことです。

どういうことかというと、高速増殖炉の炉心の周辺には劣化ウランを配置します。
この劣化ウラン中には、ウラン原子が含まれているのですが、ウランには主に2種類の原子があります。
重い方の原子をウラン238、軽い方の原子をウラン235といいます。

で、原子力発電に使うことのできるウラン(核分裂をするウラン)はウラン235の方なんです。

ウラン235とウラン238は互いに同位体であるといい、重さは違いますが、ウランには違いありません。

さて、劣化ウランに含まれているウランは、核分裂しないウラン238がほとんどなんですが、このウラン238に高速の中性子を衝突させると、核燃料となるプルトニウム239に変化するんです。
したがって簡単に言えば、燃えないウラン238が、燃えるプルトニウム239に変わり、運転すればするほどプルトニウム239が増えていくので「増殖」というわけです。

 

実際の高速増殖炉の運転では、炉心中央部にMOX燃料と呼ばれる核燃料を置きます。

使用前のMOX燃料は、燃料となる(核分裂する)プルトニウム239とウラン235が微量含まれているだけで、ほとんどは核分裂を起こさないウラン238で占められています。
そこで、運転を始めると、まずプルトニウム239とウラン235が核分裂を始めて、その際、発生する高速中性子が核分裂をしないウラン238を燃料となるプルトニウム239に変えていくのです。

〈参考サイト〉電気事業連合会の「高速増殖炉」

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