破産した町はどうなる

町が破産すると、財政再生団体に指定されるのですが、現在、日本で唯一、夕張市が指定

されています。

財政再生団体とは(デジタル大辞泉の解説)

財政状況が著しく悪化し、国の管理下で再建に取り組む地方自治体のこと。自治体財政健全化法に基づき、実質赤字比率・連結実質赤字比率・実質公債比率のいずれかが一定の基準を超えると財政再生団体に指定される。地方自治体の一般会計だけでなく、地方公営企業や第三セクターなどの経営状況も加えて判断される。従来の地方財政再建特別措置法に基づく財政再建団体に代わるもの。

 

では、町が財政再生団体に指定されると、その町はどのような状態になるのでしょうか。

これは唯一、財政再生団体の夕張市に聞いてみるしかありません。

 

夕張市のホームページをみると、平成29年6月30日現在の住人は

男性:3,954人、女性:4,603人で、合計:8,557人です。

世帯数はわずか、4,997世帯の小さな町です。

 

この小さな町が、2007年、353億円の赤字を抱えて事実上破綻したのです。

その後、借金返済のため、行政サービスが切り詰められる中、人々の生活はいっそう

不便になり、多くの若者が町を出ていきました。

そんな夕張市を何とかしようと、東京都から職員として出向していた鈴木直道さんが

市長(就任当時は30歳)になり、現在に至っています。

 

〈スポンサーリンク〉

 

<出典:日経電子版2014/1/7>

「財政破綻」は実際にどういうことなのか 夕張市長 鈴木直道(1)

夕張市は北海道のほぼ中央に位置する都市です。夕張メロンでご存じの人も多いと思います。かつては明治24年の炭鉱開始以来、炭鉱の町として栄え、最盛期の人口は12万近くを数えていました。しかし、昭和40年代に入り、産業のエネルギー源は石油に変わります。炭鉱は次々に閉山し、人口も今は1万人を切りました。そして現在夕張市は、自治体の倒産にも等しい「財政再生団体」になった唯一の都市です。
(中略)

■破綻するとここまで変わる

破綻すると今まで当たり前で、空気のようなものだった「行政」を嫌でも意識します。最近、千葉市が2月からごみの収集を有料化し、1リットルあたり0.8円にすることを決めました。住民からは「生活できない」と苦情が殺到したそうです。このごみの収集、実は夕張ではその倍以上の1リットルあたり2円です。

生活に絶対必要な水も、私が東京にいたころ住んでいた目黒区の水道料金と比べると、倍くらいです。軽自動車は、コストが安く若い世代に魅力的な移動手段のひとつです。軽自動車の税金は自治体ごとに決められるのですが、夕張では破綻後に1.5倍になりました。

生活をしていれば徴収される市民税や道民税も、法律である程度上限があるとはいえ、ほかの自治体より上乗せされました。日本で一番高い設定になっています。

それだけではありません。仕事が終わったあと同僚とフットサルでもやろう、と施設を借りるとします。仮に利用料が今まで100円だったとしましょう。全国で同じ規模のフットサルコートが300円だとわかれば、夕張は破綻した自治体なんだから300円にしましょう、と施設利用料をあげられる。割安と思われるような料金はすべて高いところに倣って、上げられるのです。夕張は「全国で最高の負担、最低の行政サービス」といわれました。何も恩恵はなく、負担だけが増えたのですから当然でしょう。

 

簡単に言えば、税金は高いのに、住民サービスは最低ということですね。

借金の返済は、住民負担を全国最高水準に、公共サービスは全国最低水準にすることで

捻出するしかありません。

では、夕張市は何でこんなことになってしまったのでしょう。

 

夕張市財政破たんの教訓 明確にすべき政府の責任
2007年3月13日付「しんぶん赤旗」より 保母 武彦 著
保母 武彦(ほぼたけひこ)島根大学名誉教授=1942年生まれ。
財政学・地方財政論・地域経済論。自治体問題研究所理事

夕張市議会は、2月28日、地方財政再建促進特別措置法に基づく財政再建計画を議決した。3月早々に、国の同意を得て財政再建団体となり、政府の管理下で18年間に約353億円の借金返済に取り組むこととなる。返済額は、標準財政規模(約44億円)の8倍にも及ぶ。
(中略)
第一の原因は、炭鉱閉山の跡処理負担である。夕張炭鉱は、国のエネルギ1政策の転換に伴って閉山が相次ぎ、90年に全(すべ)てなくなった。市は、残された市民が暮らせるように、炭鉱会社(北炭)が所有する土地・住宅・病院などを買い取り、この処理に583健円を支出した。そのための借金(市債発行)が332億円である。今後の返済総額353億円と比べれば、市の借金がいかに大きかったかが理解
されよう。この借金は、国策のツケが市財政に転嫁された結果である。

第二の原因は、観光・リゾート開発とその関連の財政負担である。市は、閉山後の主軸産業として観光を選んだ。国が旗振りをしたリゾート開発政策に乗って、市は観光開発を拡大した。北海道庁も夕張市の観光開発に期待した。 ところが、リゾートブームは去り、進出した松下興産株式会社は早々に夕張から撤退した。市は、市民の就労の場を維持するためにスキー場やホテルを買い受け、そのために借金を増やした。これは、市が国の政策に無批判に追随した結果、国政のツケが地方自治体に転嫁された借金である。

 

夕張炭鉱が閉鎖され、その経済的損失を埋め合わせるべく、マーケティングもしないまま、

観光客誘致に向けた箱モノをどんどんしょい込んでいった市当局の判断が、大きな間違い

だったということです。決して国が悪いなどと言ってられません。

 

夕張市の現状はどうなっているのでしょうか。

 

<出典:夕張市破綻から10年「衝撃のその後」若者は去り、税金は上がり…NHKスペシャル取材班>

夕張市は、財政破綻で2007年に財政再建団体に指定されたことをきっかけに、事実上国の管理下に置かれた。

2010年の法改正で財政再生団体と名称は変わったが、予算編成にしても国の同意を得なければ、新たな予算を計上することも独自の事業を実施することもできない。「地方自治体」でありながら、「自治」が許されない。そんな自治体は、全国でも唯一夕張市だけだ。

夕張市の財政はいまも火の車だ。税収が8億円しかない夕張市が毎年26億円を返済するという計画は「ミッションインポッシブル」と揶揄され、毎年の予算編成も綱渡りが続く。

(略)
こうした状況では通常、本音を引き出す取材は不可能だ。何度か通っているうちにふたりだけの場で本音を聞ける関係を築くことができれば御の字である。ところが、初対面のこの日、寺江さんの口からは予想を裏切る「本音」があふれ出た。

「ここにはね、希望がないんですよ。組織として続かないですよ!こんなんじゃ」

寺江課長の言葉に込められた怒りと諦め。それは特定の誰かに向けて放たれているというわけではなく、とにかく今自分たちが直面している状況を誰にもわかってもらえていないことへのやるせない思いが噴き出しているように見えた。

そしてその言葉がまるで普段の日常会話であるかのように職場の誰も気にとめる様子もない。周囲の職員たちは静かにパソコンに向き合い続けていた。

寺江さんが課長になったのは財政破綻直後の2007年。ヒラ職員からの大出世であるはずのこの人事は全くめでたいものではなかった。上司のほとんどがいなくなる中で、45歳という年齢もあって辞めるに辞められなかった寺江さんに管理職ポストが回ってきたのである。

部長や次長などの幹部級のポスト自体が廃止されたため、これ以上出世の望めない「万年課長」。しかも、給与は一般職だった頃よりも3割減り、月の手取りは17万円となった。

しかし、本当の地獄はここから始まった。待遇が悪くなったことを受け入れ、それでもなお市役所に踏みとどまっていた若手・中堅の職員たち、破綻した町を再生させたいと厳しい環境を承知の上で夕張市に飛び込んできた新採用の若者たちが「耐えられない」と言って次々と辞めていったのである。

 

夕張市はこれからどうなっていくのでしょうか。

 

鈴木市長が就任した際に残されていた借金の総額は322億円。その2年後から利息に加え元金の償還が始まり、毎年26億円を14年間にわたって返済しなければならなくなった。一方、税収は年間8億円足らず。地方交付税の補填があるとは言え、市職員の給与カットや住民サービスの徹底的な切り下げを行わなければ返済不可能な金額だ。

鈴木市長は言う。

「家計にたとえれば、500万円の収入で、食費・光熱費などを出して、そのうえ260万円もの借金を返済する感覚です。住民サービスはすでに徹底的に切り下げており、これ以上削れる事業はありません。」

(略)
市はこれを受け、緊縮一辺倒からの方針転換を国に訴えた。こうした熱意は国を動かし、2017年3月、財政再生計画の抜本的な見直しに国が同意。夕張市では、今残っている200億を超える借金は確実に返済していく一方で、町の再生のために必要な予算については実情に合わせて柔軟に使える環境が整った。

財政破綻から10年。止まっていた時計の針を動かすことができるのか。人口が3割減少し、市職員が大量退職した夕張市にとってはまだまだ険しい道が続いていく。

 

約5000世帯の家庭がこれから200億円を返済していくのは大変なことですが、返すしかあ

りません。

 

最後に夕張市の予備軍はどれくらいあるのでしょうか。ワースト1は福島県楢葉町

財政破たんから7年、夕張市のいま 「夕張予備軍」はどれくらいある?
the page 2014.03.14 13:00

全国に増える「夕張予備軍」

「夕張」は他人事ではありません。現在、経常収支比率ワースト1は福島県楢葉町の119.9%。夕張市が破たんした年とピッタリ同じです。2位に宮城県多賀城市の112.9%、3位に神奈川県三浦市の108.4%と続きます。

大都市なら安泰とは限りません。札幌市94.3%、仙台市96.5%、川崎市99.4%、大阪市101.9%、北九州市97.7%と、待ったなし。不景気のせいで税収が減り、生活保護費が増え、高齢化によって医療費や介護費がかさんでいるためです。今は比較的良好な市町村も、高齢化が進めば一気に貧困自治体に転落する怖れがあります。

 

ところで経常収支とは何?

the page 2014.03.14 13:00

自治体の財政力は何で見る?

家計の場合、どんなに「火の車」でも食費や住居費や水道・光熱費は簡単には削れませんし、住民税も払わないわけにはいきません。同じように都道府県や市町村にも、人件費や公債費のように毎年の支出が避けられない経費があります。これらが一般財源に占める割合を「経常収支比率」といい、財政の健全度を計るひとつの目安となっています。一般財源とは、県税や地方交付税などの使い道が決まっていない自由に使えるお金のことです。

夕張市が破たんした2006年度の経常収支比率は119.9%。本来は80%くらいに収まるのが適正とされていますから、完全にアウトでした。

〈スポンサーリンク〉