東芝は粉飾決算したのに、経営陣はなぜ、逮捕されないの?

東芝の粉飾決算は2009年~2016年の7年間で、利益の水増し額が累計2248億円に達

していました。

第三者委員会による調査では、社長らが「チャレンジ」と称して利益を上げることを強く指示し

ていたことがわかり、粉飾決算の一因となりました。

証券取引監視委の勧告を受け、金融庁は過去最高の約73億円の課徴金納付命令を出し、東芝は

不正会計で会社に損害を与えたとして、西田、佐々木、田中の3社長を含む旧経営陣に対し、損

害賠償請求訴訟を起こしました。

このように民事では訴えられましたが、刑事事件としては東芝経営陣から逮捕者は出ていませ

ん。ライブドア事件ではホリエモン(堀江貴文)ら経営陣が逮捕され実刑判決を受けたというの

にです。

一庶民の私としては、東芝もライブドアも不正会計(粉飾決算)というくくりでは、同じことを

やっているように思えるのですが、なぜホリエモンたちだけが逮捕され、東芝経営陣は逮捕され

ないのでしょうか。

こんなことに、疑問を持ちましたので調べてみました。

 

ホリエモンはなぜ逮捕されたのか

逮捕されたホリエモンは裁判で、「合法的にやっていた」と最後まで無罪を主張していました

が、有罪が確定し、服役しました。

1 ライブドア事件

ライブドア事件とは、(株)ライブドアが2004年度9月期決算報告として提出した有価証券報告

書に虚偽の内容が記載されており、それが証券取引法等に違反しているとされ、2つの罪状で法

人としてのライブドアとライブドアマーケティングおよび同社の当時の取締役らが起訴された事

件です。

当初、ホリエモンは起訴・立件などできないとたかをくくっていたようですが、最高裁まで争っ

た結果、実刑判決となり、服役することになりました。

以下は事件の特徴です。〈出典:Wikipedia〉

事件の特徴として、従来の粉飾決算事件は企業が経営破綻してから捜査されたのに対し、ライブドア事件は破綻していない会社が捜査された点が挙げられる。またライブドアの約50億円の粉飾額は金額だけをみると過去の粉飾事件と比べて少ない方であったが、判決において成長仮装型と評される通り、前年比で見ると経常利益が-120%で赤字転落のところを+300%の大幅黒字増としており、過去の粉飾事件と比較しても大きな粉飾となる。また一方で、同時期に約1600億円の資本調達および代表取締役社長が約145億円の持株売却をおこなっており、粉飾金額が高額でなくとも犯行結果は大きいとされている。また、粉飾決算の原資が違法の疑いのある手段で発行した自己株式を使い、一般株主から集めた資金であることも特徴とされている。

 

それまでの経済事件に比べ、約50億円というライブドアの粉飾額は少額であるけれども、真実

の経常利益に対する粉飾の割合が極端に大きいので、犯行が悪質と判断されたようです。

確かに東芝は7年間で、利益の水増しを累計2248億円も積み上げていたのですから、それに比べ

ると、ライブドアの粉飾金額は随分小さいものです。

実刑判決を下されたホリエモン(堀江貴文)は、このことについて、「国に狙い撃ちにされ

た」と語っていました。

逮捕容疑

有価証券取引法違反で、「偽計及び風説の流布容疑」と「有価証券報告書虚偽記載容疑」で逮捕

されました。

容疑者たちの裁判結果

合計7人の容疑者と法人2社に対して有罪が確定し、堀江貴文と宮内亮治には、執行猶予が付か

ず、実刑判決となりました。

堀江貴文…懲役2年6ヶ月

宮内亮治…懲役1年2ヶ月

岡本文人…懲役1年6ヶ月執行猶予3年

熊谷史人…懲役1年執行猶予3年

中村長也…懲役1年6ヶ月執行猶予3年

公認会計士2名に対し…懲役1年執行猶予4年

法人ライブドアに対し…罰金2億8千万円

法人ライブドアマーケティングに対し…罰金4000万円

 

事件の経過

長くなりますが、ライブドア事件の経過がよくわかるので、2006年の東京地検による家宅捜査

から、ホリエモンの実刑判決が確定した2011年までの経過を引用します。〈出典:Wikipedia〉

2006年1月16日に証券取引法違反の容疑により、六本木ヒルズ内の本社および堀江貴文の自宅・新宿の事業所などが東京地検による家宅捜査を受ける。翌17日はソニー買収のためのライブドアとリーマン・ブラザーズとのキック・オフ・ミーティングが予定されていたという。家宅捜索の翌日に宮内亮治が中国の大連から急遽帰国する。成田空港で記者団の取材を受けた際、マネーライフ買収での投資事業組合には違法性の認識はない、と投資事業組合にライブドアファイナンスが9割以上出資していたことをあっさり認め、一連の株取引に堀江は一切関与していないと答えた。

1月18日 – 国際証券出身ライブドア元取締役でエイチ・エス証券副社長(当時)野口英昭が沖縄のカプセルホテルにて死亡(沖縄県警察は自殺と発表)。

1月23日に証券取引法違反(偽計、風説の流布)の疑いで東京地検により堀江、財務担当の取締役宮内亮治、関連会社ライブドアマーケティング(現 メディアイノベーション)の社長を兼ねる取締役岡本文人、金融子会社ライブドアファイナンスの社長中村長也4名が逮捕される。これを受けて翌24日に宮内の取締役辞任が発表された。取締役会が招集され堀江の代表取締役社長の代表権及び社長の異動が発表された。後任の代表取締役に取締役の熊谷史人が、執行役員社長として平松庚三執行役員上級副社長が就任。堀江、岡本は25日にライブドア取締役を辞任した。加えて2月22日、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで堀江ら3名を再逮捕し、熊谷を新たに逮捕した。これを受け、代表取締役の異動を発表し、山崎徳之取締役が代表取締役に就任した。この間、2月9日には株式会社ライブドアオート(現カーチス)とメディアエクスチェンジ株式会社がライブドアグループから離反を表明した。また、2月21日にはライブドア株主被害弁護団が、3月11日には「ライブドア被害者の会」が結成された。

3月13日、証券取引等監視委員会は2004年9月期の連結決算を粉飾した疑いで堀江、宮内、熊谷、岡本、中村の5名と、法人としてのライブドアを証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に告発した。告発を受け、東京証券取引所はライブドア株およびライブドアマーケティング株の上場廃止を2006年4月14日にくだすことを決定した。また、同日ライブドアでも記者会見をおこない、山崎・羽田寛・熊谷が取締役を退任することに決めた。同日ライブドアは取締役会を開催し、2006年6月中旬に臨時株主総会を開催することと、新任取締役候補の一部を決定した。新任取締役候補に選任されたのは平松、清水幸裕執行役員上級副社長、落合紀貴執行役員副社長である。さらに同13日、ライブドアは東京地方裁判所へ一時取締役の選任を申し立てた。東京地方裁判所は3月17日に腰塚和男弁護士を一時取締役として選任した。

3月16日 – 株式会社フジテレビジョンが保有のライブドア株式を株式会社USENの宇野康秀社長に売却する旨を発表。ライブドアとUSENは共同の記者会見を開催し、包括的業務提携の締結を発表。

4月14日、ライブドア株式上場廃止。

5月29日 – 株式会社ライブドアオートが8月1日付で株式会社カーチスに商号を変更することを発表。

6月14日 – 臨時株主総会が幕張メッセにて開催され、取締役選任等の全議案が賛成多数で可決された。ただ、この臨時株主総会は2万人規模の会場を用意していたにもかかわらず、参加者は1800人程度であった。この臨時株主総会終了後の臨時取締役会において平松と清水に代表権を与えることを決議された。

9月4日、堀江の初公判が東京地方裁判所刑事第一部で開かれた。事件名は証券取引法違反。事件番号は平成18年特(わ)第498号等。

2007年2月13日 – 日本郵政公社がライブドアの有価証券報告書等虚偽記載にともなう損害賠償請求訴訟を提起。

3月16日 – 東京地裁が堀江に懲役2年6月(求刑懲役4年)の実刑判決を言い渡す。堀江は東京高裁に即日控訴した。

3月22日 – 東京地裁は「捜査段階から実態解明に協力的だったが、社内でのその地位や役割の重要性から、堀江被告に準じて刑事責任は重い」として、宮内に懲役1年8か月(求刑懲役2年6か月)の実刑判決を言い渡す。同日には中村と岡本にそれぞれ懲役1年6か月、執行猶予3年の有罪判決を、熊谷に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡す。

3月23日 – 東京地裁は法人としてのライブドアに罰金2億8000万円の判決を言い渡す。平松は判決後の会見で控訴しないとした。

2008年2月22日 、け、公判前整理手続きで争点にならなかった投資事業組合の脱法性を一審判決が認定しており、訴訟手続きに問題があるとの主張も判決は手続きに法令違反はないとした。堀江は最高裁に即日上告した。

8月25日 – 1審・2審(控訴審)と続いた連続敗訴の責任と堀江との再協議の結果、「上告審は事件を色々な角度からもう一度検討し、弁護団も一新して検察側と争う方がよい」ということにより、主任弁護人だった高井弁護士以下の4人の弁護団全員が辞任した。後任の主任弁護人にはロス疑惑で三浦和義の弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士と喜田村洋一弁護士らが就任した。

2009年1月25日 – 宮内亮治が上告を取り下げ、懲役1年2ヶ月とした2審東京高裁判決が確定、収監された。宮内側は「判決内容には不満だが、早期の社会復帰を優先させたい」と上告を取り下げた理由を述べている。

4月23日 – 堀江貴文が最高裁判所に上告趣意書を提出。上告趣意書では「会計基準上、あやまった取り扱いとの認識はなかった」、「当時は会計基準が確立されておらず、2008年7月に無罪が言い渡された長銀事件の最高裁判例に反する」、仮に有罪としても「わずか53億円の一期限りの粉飾で、ただちに実刑とするのはあまりに不公平で正義に反する」と主張している。堀江は記者会見で「無罪と分かってもらえる。じっくり検討してもらいたい」と最高裁の判断に期待を寄せ、「頭の中が整理されてきて堂々と反論できるようになった」と会見を開いた理由を説明した。刑事裁判が終結した後の計画については「金をがんがん稼ぐというビジネスは考えていない。夢に生きるんだということで宇宙開発とかをやっていきたい」と述べた。

5月21日 – 証券取引法違反によって株価が暴落し損害を受けたとして、ライブドア株主の一部が同社や堀江ら旧経営陣に計約231億円の賠償を求めた民事訴訟で、東京地方裁判所の難波孝一裁判長は堀江らの不法行為責任を認めつつも、堀江の逮捕や上場廃止などが急速な株価下落に影響を与えたとして、損害額を一株200円として算定し、賠償額を大幅減額した計約76億円の支払いを命じる判決を言い渡した。原告は請求より大幅に減額された賠償額を不服として控訴を検討している。

2011年4月26日 – 最高裁判所第3小法廷(田原睦夫裁判長)が堀江の上告を棄却、懲役2年6か月の実刑が確定した。決定は25日付で、5人の裁判官全員一致の結論であった。

 

 2 東芝の粉飾決算とは

東芝の不正会計問題 証券取引等監視委員会が2015年に行った報告命令をきっかけに、東芝が不正な会計処理で過去7年間に2248億円の利益をかさ上げしていたことが判明した。このうちパソコン事業では、部品価格に一定額を上乗せして製造委託先に販売し、完成品を買い取る「バイセル取引」を悪用して計約600億円の利益水増しを行ったとされる。監視委は西田厚聡、佐々木則夫、田中久雄の歴代3社長が水増しを主導していたとみて、3人を任意で事情聴取した。
〈時事ドットコム(2016/12/10)〉

 

しかしながら、この歴代3社長は結局、起訴立件されず、引責辞任するという形で決着をみまし

た。

3 東芝経営陣はなぜ逮捕されないのか

このことについて、ライブドアの粉飾決算で逮捕されたホリエモンは次のようなことを語ってい

ます。

●『東芝の場合は、一応黒字になっており、それを水増しした粉飾決算だったので、さほど悪

質とみなされず、立件は見送られた。一方、ライブドアの方は、赤字決算だったのにを黒字計上

したことが検察にとって悪質と判断され逮捕されたようだ。』

●『企業が巨大すぎると利益計上の水増し決済くらいで逮捕者を出そうものなら誰も得しないか

ら検察は絶対やらない。また、利益水増しで一番損をするのは株主さんであって、さらに粉飾決

算で逮捕者がでてしまっては更に損するのは株主さんになる。

だから東芝の粉飾決算は刑事事件として扱われないだろう。

つまり歴代社長の逮捕はないだろう。』

 

逮捕されて以降、マスコミはいわゆる堀江バッシングをしているような状況でしたし、一般国民

も概ね、ホリエモンに対し反感を持っており、彼の逮捕については「いい気味だ」と感じていた

と思います。

逮捕されるまでは、ホリエモンはITベンチャー企業を若くして成功させ、何千億円もの資産を築

いたヒーローとしてもてはやされていた半面、妬みや嫉妬も激しく、反感を持っていた人も多か

ったのです。

ただそれは、彼の言動・態度によるところも大きいと思います。一言で言えば彼は世の中をなめ

ていました。違法行為でなければ、なにをやろうが自分の勝手で、他人にとやかく言われる必要

もないし、他人の言うことなど気にすることはないと言っていました。

当時、私も彼のそういう言動に対し、「若造が何言ってるんだ」というような感情を持ったこと

を覚えています。

 

当時、世の中を回していた政治家や経済人、検察や証券取引等監視委員会のメンバーは、大方は

ホリエモンより年長者ですから、礼儀知らずの若造が札びらに物を言わせ、周囲の人々を押さえ

つけていく様子は不愉快なことであったはず。彼らが「いつか、つぶしてやるぞ」と思っても不

思議なことではありません。

 

4 東芝の粉飾決算とは

NHKクローズアップ現代No.36932015年7月29日(水)放送より引用〉

名門企業で何が起きていたのか。
私たちは100人を超える幹部経験者を取材。
20人が匿名を条件に内情を明かしました。

子会社 元社長(取材メモより)
“西田さんのころから数字を細かく気にするようになった。
社内の雰囲気は明らかに変わってしまった。”

元執行役(取材メモより)
“佐々木さんからは厳しく叱責され、“利益を出せ”とか抽象的な指示を受け、とても嫌な思いをさせられた。”

元執行役(取材メモより)
“田中さんは対外的に必要以上に高い目標を公表してしまう。
下のものが『そんな数字無理でしょ』っていうくらいの。”

東芝に異変が起きたのは、西田氏が社長だった2008年のリーマンショックのころでした。
世界的な景気悪化で売り上げが激減。
過去最悪となる3,435億円の赤字に陥ったのです。
この時期から、西田氏は業績を上げるよう部下たちに強く迫るようになりました。

東芝はパソコンや電力システムなど、事業ごとに独立採算とする「社内カンパニー制度」をとっています。
社長が、この各カンパニーを統括する仕組みです。
西田氏は月に1度、社長月例と呼ばれる会議に各カンパニーや主要子会社の責任者を呼び寄せました。

西田氏は、具体的な金額を挙げて「利益を死守しろ」などと発言。

 

結局、東芝という階級社会における最高権力者が、自分の成績をよく見せたいという動機だけ

で、部下に粉飾を迫ったということが、東芝の間違いの全てですね。しかも、そういうバカ経営

者の後をイエスマンのナンバー2が金魚の糞のようにくっついていく。そうしたバカ殿さまが3

代も続いたということです。

会社がこのような風通しの悪い空気で固まってしまうと、もう、どうしようもないですね。部下

が正しいことを言ってもそれが社長の方針に逆らうことになれば、左遷人事が待っているだけで

すから。漫画の世界の超人的サラリーマンのようなわけにはいきません。

 

 社長の西田氏が、月に1度、社長月例と呼ばれる会議に各カンパニーや主要子会社の責任者を

呼び寄せていました。

その場でワンマン社長に、具体的な金額を上げられ、「利益を死守しろ」などと言われたら、部

下は利益を粉飾するしかありません。そんなところで、「利益の現状がこうで、決算期までにそ

の利益を確保することは困難です」なんてことを言ったら、干されるだけですから数字合わせを

するしかありません。

 

それにしても、バカな人間が出世して、社長になったものです。

社長は、会社の利益が思うように上がっていなければその原因を分析して、目標に近づけるには

どうすべきかを考える責任があるのに、実現不可能な数字だけを前面に出し、現場に檄を飛ばす

だけでした。こんなトップが幅を利かすような会社だからこそ、アメリカの原子力子会社ウェス

チングハウス・エレクトリック(WH)を買い取るような判断をトップダウンでしたんでしょう

ね。

もう、むちゃくちゃです。輝かしい伝統を持つ東芝だったのに、いつからこんな愚かな企業風土

になったのでしょうか。

私はやっぱり、先に書いたように自分の成績を気にするだけで、責任の取れない人間がトップに

立ったことが、大きな原因になったと思います。個々の社員を見れば、新しいモノづくりをした

いと思っている人たちはいると思うんですね。

しかし、トップが数字だけ押し付けてくるような会社になってしまうと、やる気のあった研究者

もバカらしくて、情熱を失っていきますよね。

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