今日はテレビドラマでも日常生活でも、たまに耳にする正当防衛について
考えてみます。
「正当防衛」という漢字からその意味はわかるのですが、もう少し詳しく
勉強してみます。

こないだ、車で相手を引き殺した人が無罪になりました。

トラブル相手を車でひく、被告に無罪「正当防衛が成立」
朝日新聞デジタル 9月16日(金)21時2分配信
交通トラブルの相手を車でひいて死なせたとして、傷害致死罪に問われた東京都町田市の元会社員山田義次被告(46)の裁判員裁判の判決が16日、東京地裁立川支部であった。菊池則明裁判長は「正当防衛が成立する」と述べ、無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
判決によると、山田被告は2014年11月5日午後4時ごろ、町田市内の交差点で乗用車を運転中に大学生の男性(当時23)とトラブルになり、男性が被告の車内に手や顔を入れていたのに車を発進させ、後輪で頭などをひいて死なせた。
判決は、男性が激高していた状況を考慮すると、山田被告が防衛行為に出なければ殴られるなどの危険性があったと指摘。「車の発進、加速という行為以外の回避手段をとることは困難。やむを得ず身を守るために許される範囲内の行為だった」と述べた。・・・(以下略)(根津弥)

 

被告の山田さんが、町田市内の交差点で乗用車を運転中に被害者の大学生
(男23歳)とトラブルになり、その大学生が山田さんの車内に手や顔を
入れてきたので、驚き、身に危険を感じた山田さんが逃げようとして、車を
発進させたところ、後輪で大学生をひき殺したというものです。

裁判長は、大学生が激高していた状況を考慮すると、山田被告が防衛行
為に出なければ殴られるなどの危険性があったと指摘し、「車の発進、加
速という行為以外の回避手段をとることは困難。やむを得ず身を守るため
に許される範囲内の行為だった」と判断しました。

 

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今日のなるほど

〈犯罪が成立するには〉

僕たちは、悪いこと(犯罪)を行えば、捕まって罰せられます。
で、このことをもう少し詳しく見ていくと、犯罪が成立するに
は次の3つの要素が必要とされています。

ア 犯罪の構成要件に該当するか

この犯罪構成要件とは、「刑法」等の各条文に規定された
犯罪定型のことです。
日常生活ではあまり聞かない言葉ですのでとっつきにくいのですが、
上の記事の「傷害致死罪」は刑法205条に「身体を傷害し、よっ
て人を死亡させた者は、二年以上の有期懲役に処する。」と規定され
ています。
したがって、山田さんの行為が205条通りの行為だと判断された、
すなわち犯罪の構成要件に該当したので、起訴されたのです。

では、山田さんは205条通りの犯罪行為を行ったのに、なぜ無罪
判決を受けたのでしょうか。
それには、次の違法性があるか無いかに関係しているのです。

イ 違法性があるか

違法性とは文字通り、行為が法に違反することを言います。
この法的に許されない行為の類型が、前述した(ア)の構成要件
であるわけです。
したがって、犯罪構成要件に該当すれば、原則、違法なわけですが、
念のためにというか、例外的に違法性がないかをどうかを確かめます。

この事件の場合は、まさにこの「違法性」がないと判断されたんですね。
で、その理由が「正当防衛」ということです。

では、「違法性がない」ことの理由、すなわち、違法性阻却事由が、
「正当防衛」だけかというと、他にもあります。
これらは刑法35条から37条に規定されています。

例えば、35条には「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」
とあります。
刑務所の職員が死刑を執行したり、外科医が患者の身体をメスで切ったり
することは正当な業務ですよね。だから違法性は阻却されます。

そして、36条には正当防衛が規定されています。
刑法36条
➀急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
➁防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

この事件では➀に該当すると判断されたんですね。
ただし、簡単に正当防衛が認められるのではなく、
「そうするより、他に防衛する手段がなかった」というあたりを
吟味されます。

ウ 責任能力があるか

さて、犯罪が成立するには(ア)の構成要件と(イ)の違法性が認定されたあと、
さらに「責任能力」あるかどうかを確かめねばなりません。
「責任能力」とは、(ア)と(イ)の行為者に対して、その人を非難できる
かどうかということです。

例えば、14歳未満の刑事未成年者は、刑法41条に「罰しない」と
明記してあります。したがって、14歳未満の子供は殺人を行っても
罰せられることはありません。まだ、善悪の判断が未発達なので成人と
同様に処罰するのは可愛そうだという考えですね。

今日は正当防衛の記事をきっかけに、犯罪について考えてみました。

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