刑事事件に関するちょっと珍しいニュースがありました。
それは、およそ25年も前のわいせつ行為について、
被害女性が訴えを起こしたというものです。

ニュースによると、現在、金沢市に住む30代女性が小学生当時、富山県内の小学校の教頭からわいせつ行為をされたということで、富山市に住む元教頭の男性を訴え、約1100万円の損害賠償請求をしたというものです。

一方、元教頭は取材に対して、「性的なことは一切していない」と女性の訴えを否定しているそうです。

25年前のわいせつで提訴…30代女性、小学校元教頭相手取り 金沢地裁 産経WEST 約25年前に通っていた富山県内の小学校で教頭からわいせつな行為をされ、精神的な苦痛を被ったとして、金沢市の30代女性が、元教頭で富山市の男性に約1100万円の損害賠償を求め金沢地裁に提訴した。提訴は19日付。元教頭は24日、取材に応じ「性的なことは一切していない」と訴えを否定した。

訴状によると、当時小学5~6年生だった女性は、通っていた富山県の公立小学校で、教頭から胸や尻を触るなどのわいせつ行為や性的な虐待行為を複数回、受けたとしている。

教頭は担当する理科の授業中に女性を準備室に呼び、服を脱がしたり尻や胸を触ったりしたほか、卒業後も女性を呼び出していた。女性は、生理不順や心理的に不安定な状態が続き精神科に通院しているという。

不法行為による損害賠償請求権の時効は?年だが、原告の代理人弁護士によると、被害による心身症状が発症した時点を時効の起算点とする判例があるといい、この女性のケースは時効に当たらないとの認識を示した。

・・・・(以下略)

今日のなるほど

まず、この女性の訴えが真実だったとすると、元教頭の行為は、間違いなく「強制わいせつ罪」にあたり刑事罰相当ですが、刑事については明らかに公訴時効を過ぎてしまっています。

また、「強制わいせつ罪」は「親告罪」ですので、告訴がなければ公訴することができません。

【刑法】
176条 13歳以上の男女に対し,暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者には、6月以上10年以下の懲役。
    13歳未満の男女に対し,わいせつな行為をした者は、同様に6月以上10年以下の懲役。

※条文の後半は、13歳未満だと判断能力がまだ備わっていないので、暴行、脅迫がなくても、また本人の了解があろうとなかろうと、わいせつな行為をした者は、処罰すると規定したものです。

ところで、親告罪は告訴する必要があるので、告訴期間(原則的に犯人を知った日から6か月以内)が定められています。
ただ、強制わいせつ罪(刑法176条)、強姦罪(刑法177条)、準強制わいせつ及び準強姦罪(刑法178条)等の性犯罪にはこの告訴期間の制限は適用されないので、6か月以上経過しても告訴できます。

ただ、このニュースの場合(強制わいせつ)は、告訴がたとえ受理されても、公訴時効が5年のはずですので、刑事事件としては時効が成立しているように私は思います。

さて、以上のような状況が推察されるので刑事ではなく、民事の損害賠償請求という形になったのだと思います。

ところで、民事の損害賠償請求にも時効(消滅時効)は規定されています。一定期間内に提訴しないと、請求権が消滅してしまうのです。

民法709条に不法行為による損害賠償請求権が規定されていますが、724条にはその時効が規定されています。

民法724条には
➀被害者が「損害及び加害者を知った時から3年間請求権を行使しないとき」には時効によって消滅。
➁また、「訴えを起こさないまま、不法行為の時から20年を経過してしまう」と時効によって消滅。
と規定されています。

ですので、金沢地裁がこの訴えを受理すかどうかについては興味のあるところです。

ニュースによると、原告女性の弁護士さんは、「被害による心身症状が発症した時点を時効の起算点とする判例があるといい、この女性のケースは時効に当たらない」との認識を示しているようです。

判例に、民法724条の「損害及び加害者を知った時から」という起算点を「被害による心身症状が発症した時」とした例があるというんですね。

さて、元教頭は否定しているようですが、この女性の訴え通りのことがあったとすれば、元小学校教頭は卑劣で許しがたいやつですね。絶対に責任を取らせたいです。

はたして金沢地裁は訴えを受理するのでしょうか。

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