イオンのお話し
こんにちは。
身の回りには様々な健康グッズや健康食品・飲料があります。
そこで、そうした健康器具・食品の何が健康にプラスに
なるのか、体に良く効くのかを調べて見ました。
1 マイナスイオン効果について
(1)そもそもイオンとは
イオンとはそもそもどんな粒子なんでしょうか。
高校時代に帰って復習してみましょう。
最も身近な塩水について考えます。塩はほぼ純粋な塩化ナトリウム(NaCl)です。
塩水はこの塩化ナトリウムが水に溶けている塩化ナトリウム水溶液ということです。
このNaClは、正の電気を持ったナトリウムイオンと負の電気を持った塩化物イオンが
イオン結合で結合した物質ということになります。
このNaClを水に溶かしますと、水中でナトリウムイオンと塩化物イオンに電離して
完全に溶けていきます。(水に溶かしたNaCl(塩)が溶解度以内であれば)
こんなわけで、塩水の入ったコップの中では、正の電気を持ったナトリウムイオンと
負の電気を持った塩化物イオンが共存しています。
このように、イオンそのものが存在する場所は一般に水溶液中と言えるでしょう。
空気中に正の電気を持った陽イオンや負の電気を持った陰イオンそのものが
単独で浮遊しているということはあり得ません。
塩水の中に存在しているナトリウムイオンや塩化物イオンが空気中に浮遊しているということは

出典:数研出版化学図録 ナトリウムイオンと塩化物イオンのイオン結合の様子
ありません。
テーブルの上に大量の塩をぶちまけても、成分イオンが空気中に遊離していくことはありません。
塩(塩化ナトリウム)そのものは、Na+イオンと、Cl-イオンが交互に積み重なり、
静電気を中和しながら立体的に大きく成長したものです。
さて、このように、イオンには正の静電気を帯びた陽イオンと負の静電気を帯びた陰イオンとが
あります。
(2)陰イオンの具体例
では、陰イオンの仲間にはどのようなものがあるのでしょうか。
※イオン式の電気量(価数)をソフトの関係で右肩に書けませんので、御了承ください。
Cl-(塩化物イオン)、O2-(酸化物イオン)、S2-(硫化物イオン)、NO3-(硝酸イオン)、SO42-(硫酸イオン)、
CH3COO-(酢酸イオン)など。
(3)マイナスイオン効果のマイナスイオンとはどのイオンのことでしょうか
マイナスイオンとはマイナスの静電気を持ったイオンということですから、上記の陰イオンのことをさします。
では、マイナスイオン効果を持ったマイナスイオンとは、具体的にどの陰イオンのことでしょうか。
それにすぐに一つの疑問が生じます。先に書いたように、上記の陰イオンは普通は水溶液中に存在するものですから、
部屋中に(空気中に)発生する体に良いマイナスイオンとは具体的にどんなイオンなのでしょうか。
では、マイナスイオン発生機のメーカーの説明を読んでみましょう。
(4)メーカー各社はマイナスイオンをどのように説明しているのでしょうか。
まずマイナスイオンの発生源は、滝や森林、プラズマ放電、コロナ放電などとしています。
今でも、TVの旅番組等で森林や滝を取材したときは、レポーターがマイナスイオン効果で、
「気持ちいい、生き返る」などと言っていますね。
さて、「マイナスイオン」という言葉自体は教科書等、講学上使われておらず、陰イオンのことを指すと考えられます。
「マイナスイオン効果」製品を販売する側は、「マイナスイオン」は家電製品、置物、滝などで発生し、
大気中に浮遊し、健康に良い効果を与える物質であると主張していますが、
そのマイナスイオンそのものの実態は何なのかを説明している会社はありません。
つまり、「マイナスイオン」は「マイナスイオン」そのものだと言っているだけです。
ここで科学的に妥当だと考えられるものとして、大気中に存在する荷電粒子が上げられます。
その荷電粒子が、マイナス(負)の静電気を帯びている場合、それをマイナスイオンと称しているのかも
しれません。
ただこの負の静電気を帯びた荷電粒子は、先に説明した水溶液中の陰イオンとは全く別物です。
したがって、マイナスイオンが科学的に何をさしているのかは、定かではありません。
(4)「マイナスイオン効果ビジネス」のいう「身体への効果」とは
とにかく身体の健康増進に効果があると謳っています。
その効果についても、いろいろと唱えており、血液の浄化作用、細胞に対する抗酸化作用、
免疫機構の向上、有害な電磁波から守る等、何にでも効くという感じです。
しかし、本当に効くのかどうかはハテナ?です。
法律に基づいて販売されている医薬品のような臨床実験など示されているものは私の
見た限りではありません。
2 まとめ
現在では、マイナスイオン効果を謳った空気清浄機はほとんど販売されていません。
人体への「マイナスイオン」効果の科学的・医学的根拠を示した資料は見つかりませんでした。
そもそも、マイナスイオンの実体に言及した資料も見つけることができませんでした。
マイナスイオン関連グッズを販売している会社が、マイナスイオンに言及しているものもありましたが、
多少なりとも科学・化学を学んだものには、意味不明(説明書きを書いた人はわかっているのかな?)
の記述でした。
結局、マイナスイオン効果を謳っている人が、「マイナスイオンだから、マイナスイオンは健康に良い」とだけ
主張しているようです。
それをどう捉えるかは、「あなた次第」ということでしょう。
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